第8章 お前ら、人事を尽くすのだよ!
いい雰囲気になってる2人にクラス中から冷やかしと嫉妬の嵐が舞い降りる。だが構わず高尾はお調子者ぶりを発揮し、ギャラリーに向かってにかっと笑う。
「へっへー!どうだ、羨ましいだろー!?」
「ちょっと、高尾君!?」
赤面して声を荒げる夏美に高尾はこっそりと耳打ちをする。
「いーから。こういう時は開き直った方が案外早く収まるんだよ。」
(耳打ち、弱いからホントやめてー!)
声が出そうなのを精一杯我慢し、言われたとおり様子を夏美は確認すると、からかってもダメだと思ったのかギャラリーはどんどん冷めていく。
「あ、ほんとだ…。」
「だろ?」
夏美に向かってウインクしながら言う高尾を見て、つい微笑む。
(ふふ。高尾君ってこういう時頼りになるよね。ウインクしちゃってなんだか可愛いな。)
そして部屋割りや飛行機の席決めをしてロングホームルームが終わり、夏美は愛や優と部活へと向かう。
そして部活が終わり慣れた手つきで夏美は片付けを済ませ、帰宅しようとしたところ高尾に呼び止められて一緒に帰ることになる。
2人は自転車をこぎ、夏美の家の前に到着すると2人とも自転車から降りる。
(…修旅までには誤解を解きてえから、今言っちまおう。)
「…なあ、真理子とのことなんだけどさ。」
夏美も唾を飲み込んで、耳を傾ける。
「…ヨリ戻してなんかないぜ。」
「本当!?」
夏美は嬉しそうにすると高尾はまだ口調を変えずに話を続ける。
「あの日、真理子と決着つけるために俺から呼び出したんだ。」
「そうだったんだ…。」
(でも、何で?2人は中学の時にちゃんと別れたはずじゃ…?)
夏美は疑問が即座に浮かんだがとりあえず話を聞くことに徹する。
「それに真理子に頼んでお前を呼んでもいない。キスだってあいつからしてきたけど、俺完璧油断してた。俺のせいでお前まで巻き込んじまって、本当にごめん!!」
頭を深深と夏美に下げる高尾を見て、夏美はしばらく黙るが誠意を充分に感じ取りにっこりと微笑んで、高尾の頭を撫でる。