第8章 お前ら、人事を尽くすのだよ!
ロングホームルームの時間になり修学旅行の班決めが始まる。
秀徳はシンガポールへ行く事になっており、理由は英語教育に力を入れている事やなるべく生徒に海外文化を触れて欲しいという事だ。
ちなみに期間は3泊5日である。
クラス内では誰と一緒になるかでそわそわしていた。特に気になる男女がいれば尚更だ。
担任がまず女子同士、男子同士で組むように指示する。
とりあえず夏美は愛と優と組み、高尾は普段仲良い他の部活の男子と緑間と組む。
担任はトラブルを避けるため、男女グループの組み合わせをあみだで決めようとした。高尾は計画が狂い、唇を噛み肩を落とす。
だがここで夏美が腹を決めてゆっくりと手を上げた。
「ん?どうした、氷室?」
もちろん言いたいのはただ一つ。だけど、クラス中の痛い視線を浴びて流石の夏美もなかなか言い出せずに目を俯く。愛と優だけは夏美を暖かい目で見守っていた。
(…お願い、いちごパンツ!おは朝!力を貸して!)
「…黙ってるなら次進めっぞー。」
担任の言葉で夏美はようやく立ち上がり、赤面しながらも担任の顔を真っ直ぐ見つめる。
「…あの、先生。あみだじゃなくて、自由になりたい人同士で、組みたいです。」
愛と優以外はクラス中が騒つき、担任が一旦黙らせる。
「…俺は構わんが、他の奴らはどーだ?」
クラス一同は何かを察して、というより面白がって満場一致で賛成をした。
夏美はホッとして胸を撫で下ろし、担任やクラスメイトに向けてお辞儀をし礼をすると席に着く。
その様子を真理子はほくそ笑みながら見ていた。
(…ふーん。随分大胆に出たのね。でもそう簡単に和成は渡さないからね。)