第2章 二度ある事は三度ある
トイレから出て来たタイミングが偶然一緒になり、廊下で高尾と夏美は先ほどのバスケの話をしている。
「高尾君はバスケやってるの?」
「バリバリ!ポジションはポイントガード(PG)!」
「PGなんだ!じゃあ、きっと視野が広くて冷静でアシストが得意なんだね!いいね!!」
夏美は大きな目を丸くして高尾のことを褒める。
「いや〜そんな大したことないよ〜」
謙遜しながら内心浮かれている高尾であった。
「さっき言ってたけど、氷室さんは見る専なん?」
「見る専って?」
「あ、悪りい。見るのが専門ってこと!」
(どうやらスラングがわかんねーみたいだな。これから気い付けなきゃな)
「ごめんね、まだ日本のslangがイマイチ分からなくて」
「やっぱ?これからは俺が教えるぜ。」
「ありがとう。運動神経悪くてね。
昔お兄ちゃんがplayしてるのを見てあたしもやってみたんだけど、ドリブルしてるボールを蹴ったり、すぐお兄ちゃんや友達にsteal(スティール)いっぱいされて、散々で諦めちゃった」
夏美はエヘヘと笑い、自分を情けないといったような表情をした。
「へー、意外とドジっ子なんだな。ハハハ!」
(想像すると、面白えーな。てか、可愛い!)
小さい夏美が一生懸命プレイして失敗する姿を想像した高尾は微笑ましくなり、またお腹を抱えて笑った。
「もう、そんなに笑わないでよ!」
(すぐ、人のことからかうんだから〜)
夏美はムッとした表情で高尾を見上げる。でも彼には彼女の全てが何でも可愛く思えた。
「ハハ。悪りい悪りい。ついね。そうだ、見る専ってなら、ウチのバスケ部でマネージャーやらない?」
高尾はさらっと夏美を誘い、自分でも決まったと思った。すると、すぐに返事が返ってきた。
「もちろん!てゆうか、最初からそのつもりだったの!」
(秀徳は歴戦の王者って言われるほど強いみたいだし、あわよくばお兄ちゃんに会えるかもってね!)
「おー!!やったぜ!夏美ちゃんだったら男バス皆大歓迎だよ!放課後、一緒に体育館行こーぜ!」
(もう、これ完璧運命だわ……)
こうして夏美が秀徳マネージャーとなり、2人の長い物語が始まることになった。