第8章 お前ら、人事を尽くすのだよ!
「ウソ、でしょ、夏美…。」
顔を上げると愛ちゃんが肩を落として心底落胆していた。さすがの優ちゃんも愛ちゃんと目を見合わせて驚いていた。
「確か、夏美がトイレに行った後だよね?高尾君と真理子が抜け出したの。」
「…うん、そうだね。」
2人が状況を振り返り確認していると、優ちゃんは何かに気付いたのか私の顔を覗き込んで冷静に尋ねた。
「…ねぇ、ちょっと待って。なんであんたわざわざ外に行ったの?」
優ちゃんのあまりの鋭さに私は思わず目を見開く。けど、こういう時に彼女の冷静さは本当に助かる。私はハンカチで一旦涙を吹いて2人に顔を向けて話す。
「…私がトイレに行った時に真理子ちゃんからメールが来たの。高尾君が話したい事があるから外で待ってるって。それで…。」
2人は話を聞いてから暫く黙っていると急に優ちゃんが頭を抱える。
「夏美。あんた、真理子にまんまと嵌められたね。…それしても全く、なんて奴なの!?」
「「え、どうして?」」
愛ちゃんと私は思わず声を揃えると優ちゃんは溜息をついて腕を組む。
「普通さ、大事な話がある時って直接言うでしょ?高尾君とは同中なんだけど、絶対そんな回りくどい事しない。ましてや真理子に頼むなんてないでしょ。」
…そう言われるとそうかもしれない。だって高尾君はあのお兄ちゃんに宣言までしたんだもの。それに今日だってちゃんと私に直接話あるって言ってくれたよね。
私が考えを張り巡らせてる中、愛ちゃんが優ちゃんの意見に納得したみたいで手の平にぽんと拳を置く。
「あ、そっか。そうだよね!てことは優って高尾君と真理子と同中だったの!?にしてはあんまり話してるの見たことないけど。」
愛ちゃんと同じ事を思いながら私は優ちゃんの話に耳を傾ける。
「最初は仲良かったけど、あいつが高尾君の事好きになってから、ちょっと話しただけで牽制したり脅したりするもんだから、面倒臭くなって距離を置いてんの。」
「あー、真理子ならやりかねないね。てか1年の時もそうだった!」
2人はうんうんと頷いて納得すると私の肩に手をぽんと置く。