第8章 お前ら、人事を尽くすのだよ!
ーSide 夏美ー
高尾君達と別れてから学校の近くにあるミスドーナツに入るまで私達3人は他愛のない話を延々としていた。
幸いにも秀徳の生徒らしき人は全くいなかったので、適当に空いてる席に座りそれぞれ好きなドーナツやドリンクを注文し、席に座る。
「今日も練習おっつー!カンパーイ!」
愛ちゃんが嬉しそうにドリンクを手に持って乾杯をすると、私と優ちゃんも一緒に乾杯をする。
「「カンパーイ!」」
ドリンクを一口飲み、ドーナツを食べて一息つくと愛ちゃんが真っ先に天真爛漫に私に尋ねてきた。
「ねえねえ、夏美!さっき高尾君に手握られてたよね!?優と2人で超キュンキュンしてたんだよ!!何話したの!?」
「意外とやるよね〜、高尾君。」
優ちゃんも目をキラキラさせて愛ちゃんと盛り上がっているけど、私は対照的にションボリとしていた。
愛ちゃんが私の方を向くと、ハッとして私を気遣う。
「ああ、ごめん夏美。勝手に盛り上がって。ささ、話して!」
「うん。…鍵を渡したらね、高尾君が鍵と一緒に私の手を握ってきて。」
2人は食い入るようにうんうんとうなづいている。だけど私は浮かない顔をして続きを話す。
「後で話あるって言われたの…。」
「「え!マジ!!」」
2人は声を揃えると同時に身を乗り出して、私を睨むように顔を覗き込んできた。思わず圧倒されて私は少し身を引く。
「何やってんのよ!?それ絶対告白だったって!!」
「そうだよー!ウチらの事、気にしなくてよかったのに〜。」
2人に詰め寄られた私は握り拳を力一杯握りしめながら、目を俯いて顔を歪ませる。
「…でも!カラオケのドアの前で、高尾君と、真理子ちゃんが、キスしてたの…!!」
その時の居た堪れない気持ちが蘇って私はポロポロと涙を零す。