第8章 お前ら、人事を尽くすのだよ!
「ああ、そうだ!こんな事に口を出すなんて面倒だ!けど、それでは俺が困るのだよ!」
真ちゃんがまた怒声をあげて言うけど、それ以上に今真ちゃんの口から出た言葉が信じられなくて俺は目を見開いた。
「おい、何言ってんだよ?」
真ちゃんは一旦自分を落ち着かせて、いつもの呆れたような顔で眼鏡を押し上げる。
「…推測だから言いたくはなかったが、氷室と喧嘩してからどこかお前は弛んでいるのだよ。挙句IHにも出られなかった。」
「…。」
口の周り具合には自信のある俺だけど、この時ばかりは真ちゃんの言ってることが十中八九当たってるもんだから黙ってしまう。
「.…それにカラオケで氷室がお前と仲直りしたいからお前の気持ちを知らないかどうか聞いてきたのだよ。」
真ちゃんは俺に真剣な眼差しをむける。てゆうか、真ちゃんの口から言われるのは、ぶっちゃけ信じられなくて俺は細い目を最大限に見開かせる。
「そして今さっきお前に言った事を氷室にも言ったら、氷室は顔がくしゃくしゃになるくらい心底喜んでいたのだよ。」
「…夏美ちゃんが?」
真ちゃんはコクリと頷き、俺はまた目を見開く。
てことは夏美ちゃんは周りに相談してまで俺と仲直りしたかったっていうのか?しかも辰也さんや火神以外の奴に。
そして真ちゃんは俺に指を指してピシッと決める。
「まあ、俺程ではないがあいつなりに人事を尽くそうとしているのだよ。だから、お前も人事をあらゆる限り尽くして何とかしろ!ただし、どんな結果になろうともバスケは絶対に手を抜くなよ!」
俺は思わず厳しい顔を崩して、自分が情けなくなり口角を上げて首の後ろをかく。
「まっさか、真ちゃんに励まされるなんてよ。思いもしなかっぜ。…けど、ありがとな。おかげでスッキリしたよ。」
真ちゃんは鼻で笑い、懲りずにおは朝占いを勧めてきたけど俺は適当に理由作って丁重にお断りした。
夏美ちゃん、俺人事を尽くし切れてなかったな。辰也さんにも宣言したくせにな。
だけどもうこれからは何があっても人事を尽くして、お前に俺の気持ちをこの上なく伝える。
覚悟しとけよ?