第7章 Turning point
「…うん、ありがと!大我らしい励まし方だったよ。」
私は丸めた手を添えて微笑む。大我は頭をぽりぽりかきながら照れ笑いをする。
「そーか?へへ、なんか、照れるわ。」
ふふ、照れちゃって大我ってやっぱり可愛いな。
そう思いながら微笑んでいると大我はいきなり真剣な眼差しを向ける。
「…なあ、一体なんで泣いてたんだよ?」
「…。」
私は黙ったままでいると、大我はさっき使ったボールを拾ってまたいきなりパスしてきたので、私はすばやくキャッチする。
「1on1で俺を一回でも抜くか点入れたら、何も言わなくていーぜ。」
私は大我の無理矢理な勝負に不満を露わにする。
「な!いきなりなんでそうなんの!?てか、絶対勝てないじゃない!」
「お前の気が済むまでやっていーぜ。ちゃんと手加減してやるから。」
それでも絶対私が負けるのはわかってるくせに大我は引く様子はなさそうだったので、溜息をついて仕方なく応じることにした。
そして私と大我は腰を落とす。私がドリブルをついて右に抜こうとしたその瞬間早速カットされる。抜くのを諦めてそこからシュートを放っても結局ブロックされる。
ほぼ諦めながら十回目をやろうとした時、大我の後ろにある網目を通して1番見たくなかった2人を見た。
…高尾君が真理子ちゃんの手を引いて一緒にいる。やっぱりあの後2人でその場を抜けたの?
私は一気に青ざめて、口が半開きになりボールを落とす。
「おい、どうしたんだ?」
2人に指を差すと大我も後ろを振り向いた。
「…あいつ、高尾じゃねーか!?なんで別の女といるんだ!?」
私は一気に腰が抜けて地面に膝を付けて、また涙が溢れ出す。
「…そんなの、私が聞きたいよぉ…!」
泣きじゃくる私を大我は2人が見えないように覆い隠して私を抱きしめた。
「…これで、見えねーだろ。」
心が弱ってる時にそんな事されたら、いくら弟だと思ってる大我でも心が揺れそうになる。いつもなら抵抗する私もこの時は彼の腕の中で収まる。
「…う、う、うわああん。た、たいがぁ!」
大我は何も言わず背中をさすってくれ、思いっきり私は大我の胸元で気が済むまで泣いていた。