• テキストサイズ

Field Of View〜君を捕まえたい〜

第7章 Turning point


俺がパーティルームに戻るとえぐっちゃんと野崎ちゃんが、俺に食いつくように迫ってきた。

「ねえ、高尾君!!夏美が、トイレから戻ったと思ったら、泣きながら荷物持って帰っちゃったの!!」

「聞いたら、門限だからって一点張りで…。でも絶対何かあったと思って…!心当たりある?」


うわ、マジかよ…!夏美ちゃんの事だって心配だけど、今の真理子を放っておけねーし、タイミング悪過ぎだっての!!


俺は仕方なく心を鬼にして、2人を払い除けるように言い聞かす。

「…わりい、今それどころじゃねぇんだ。通してくんない?」


2人はお互い顔を見合わせて驚いていた。そりゃ、夏美ちゃんの話になったらいっつも俺は過剰に反応してたからな。だけど、今回は真理子を優先したかった。


ごめん、夏美ちゃん…!あんな真理子を放っておいたら、きっと自分の事がもっと嫌いになってお前にも顔向けできなくなっちまう。



心の中で謝りながら、自分と真理子の荷物を持って、適当に理由をつけてパーティルームから去って行く。


店の外で地面に膝をつけて子供のように泣く真理子の前に手を差し伸べる。


「…ほら、立てよ。送ってくから…。」


顔を上げた真理子は相変わらず信じられないというような顔で俺を見つめるだけだった。仕方なく俺は真理子の手を握って無理矢理立たせる。



真理子は手を払いのけようともせず、そのまま俺に手を引かれる形で俺達は歩き出す。



途中通りかかったストバスのコートでドリブルの音が聞こえたけど、確認する余裕はなかったので、そのまま素通りした。



俺達は終始無言のまま、真理子の家までたどり着いた。


「…あり、がと。和成…。」

震えた声でお礼を言ってくれた真理子に、俺は「ああ」と短い返事をしてその場を去ろうと背中を向けると真理子が突然抱きついてきた。


「…お願い、和成…。泣き顔、パパとママに見せたくないの。…だから、暫くこのまま、いても…いい?」


真理子から甘えられたのは初めてで俺は驚きながらも、今までのことを思うと後悔や罪滅ぼしが混ざり、そのまま彼女を受け入れる事にした。


「…いいぜ。お前の気が済むまで、ここにいっからよ。」


俺が切なげに言い聞かせると、真理子は啜り泣きながら俺の背中で懸命に涙を拭いていた。



/ 205ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp