第7章 Turning point
ーSide 高尾ー
店の玄関前の階段に俺達は腰を掛ける。そして真理子は涙で目を潤ませて、俺を上目遣いで見つめる。
「…ねぇ、和成。あたしはまだあんたの事好きなの。ヨリ、戻したい。」
俺は表情を変えず、冷静に言い放つ。
「…なあ、真理子。ごめん。俺、やっぱり夏美ちゃんの事忘れられない。だから、諦めてくれねーか?」
真理子は泣きそうになっていた。けど、俺は夏美ちゃんの時のように頭を撫でたりすることはしない。
「そう言うと思った。じゃあ、最後のお願いがあるの。」
「…何だ。…!」
俺の隙をついて真理子はリップ音を立ててキスをしてきた。普通は目を閉じるもんだけど、この時ばっかはびっくりしちまって目が開いていた。
そしてその瞬間をトイレから来た夏美ちゃんに見られてしまった。
「高尾君、真理子ちゃ…。」
俺は夏美ちゃんの声を聞いて、真理子を放して夏美ちゃんの方へ振り向く。
「夏美ちゃん!」
夏美ちゃんは声と体を震えさせて、口をわなわなさせている。
「あたし、高尾君が話あるから外来てって真理子ちゃんからメールが来たから、ここに来たんだけど…。」
…まさか、これが狙いだったのかよ!ちくしょう…!
「夏美ちゃん、違うんだ、これはその…!」
俺は立ち上がり、弁解しようと夏美ちゃんに近づいて手を握ろうとすると手を振り払われてしまう。そして彼女の涙がポロポロと頬を伝う。
「…あたし、1人で舞い上がってたんだね。馬鹿みたい…。」
違う…!あれは真理子からしたんだ!
「待ってくれ、本当に違うんだ!!」
俺の言い分を聞く余裕は夏美ちゃんにはないみたいで、夏美ちゃんは俺を睨む。
「…違うって何!?からかうのもいい加減にして!!」
そう言い残して夏美ちゃんは腕で涙を拭きながら、その場を去る。俺は夏美ちゃんを再度呼ぶが、全く聞き入れてくれずに姿が見えなくなった。
…違うんだ。本当に好きなのは、お前だけなんだよ…。何で信じてくれないんだよ…。