第7章 Turning point
もうすぐ夏美たちの順番になり、高尾はマイクを渡して、前に出る。それはもう冷やかしの嵐の中を2人は歩いていた。夏美はたったの数十歩の距離なのに、心臓が破裂しそうだった。
高尾は赤面して俯く夏美を見て、愛しく見つめながら微笑み、恥ずかしさを打ち消すように軽めの口調で言った。
「大丈夫!俺がリードしてやっから!…周りのヤツらなんか気にすんなって!」
(…ふふ、こういう時に頼りになるな、高尾君って。恥ずかしいとかどうでも良くなる。)
夏美は高尾の言葉に安心して、微笑みを浮かべる。
「…うん、ありがと!頼りにしてるよ。」
高尾に挑戦的な目をし、人差し指を立てて高尾の顔を近づけながら言うと、高尾も負けじと夏美と同じことをする。
「おうよ!任しとけって!…覚悟しとけよ?」
夏美はいつものお調子者の高尾に、溢れんばかりの笑顔になる。久しぶりに夏美の笑顔を近くで見た高尾は胸を締め付けられて赤面する。
イントロが流れ出し、真理子以外のクラスメイトからの手拍子が溢れかえる。
初めて聞く夏美の歌声を聞きながら、高尾は彼女の声の透明さと高さに、また胸がときめいていた。
(…歌うめーな。声もいつもと違う可愛さが満載だし!こりゃ俺も負けてらんねー。)
そして夏美も初めて聞く高尾の歌声を聴いて、同じようなことを思いながら胸が締め付けられる。
(高尾君の歌声、こんなにかっこいいんだ…。ギャップある…。)
お互いの声にときめきながら、2人は歌詞に自分達を重ねていた。
(…思えば、夏美ちゃんと出会ってから毎日が楽しくて仕方がなかった。バスケだってもっと頑張ろうと思った。やっぱり、俺、夏美ちゃんが好きだ…。)
(…今になって高尾君と一緒にいるとどんなに楽しくて心地よかったのか、よくわかったよ…。こんな気持ちになったのは初めて…。ちゃんと、仲直りしたい。)
曲が終わる頃、夏美は最後のあのセリフに合わせて、赤面して俯きながら言った。