第7章 Turning point
「…あたしはあいつと一緒に全国行きたくて、もっとあたしを好きになってほしくて、部活が終わってもお互いに自主練してた。
あたしがレギュラーを勝ち取った時、和成は心の底から喜んでくれた。そんな和成にあたしは気持ちが舞い上がって、とうとう告った。」
夏美は黙って聞いている。
「…最初は信じられなかったけど、すんなりとOKしてくれた。あたしは嬉しくて和成の喜ぶ事だったら何でもしてた。でも最後の全中をキッカケに振られちゃったの。」
「…そうだったんだ。」
夏美が神妙な面持ちをすると、真理子は夏美の顔を覗き込む。
「…ねぇ、去年の秋だったかな?あたし見ちゃったんだよね。和成が夏美に告って微妙な答え出して振ったのを。」
当然夏美は目を見開いて驚きを隠せない。今更否定しても仕方ないので夏美はそのまま黙っていた。真理子は意地悪な顔をしてさらに追い打ちを掛けてきた。
「…あんたのお兄ちゃんと和成が揉めたのもね。お兄ちゃん、写真の通り、めちゃくちゃイケメンで、しかも強そうで、あんたの事すっごい大事にしてて。
あれじゃあお兄ちゃん離れ一生できないよね。本当あんなお兄ちゃんいて羨ましい。」
夏美はここで真理子が何を言いたいのかだいぶ検討がつく。真理子は夏美の手を握り締めて、涙を目に浮かばせて夏美を見つめる。
「お願い、夏美。あたし、和成とヨリを戻したい。…協力、してくれるよね?」
(…そんな顔されたら断れないよ。…でも、あたしに高尾君と仲直りする資格はもうないよね?あたしの我儘で大我も、高尾君もあたしの元からいなくなっちゃった…。もう、あたしにはお兄ちゃんしか、いない…。)
夏美は腹を決めて、真理子に言ってしまう。しかも渾身の作り笑いをして。
「…当たり前じゃない!友達だもの!協力する!」
「…ありがとう!夏美!これからもずっと友達だからね!」
(ふん、案外チョロいわね。まあいいけど。1番の邪魔者はこれで消えたし。)
夏美はなぜ胸が苦しいのかこの時は理解ができない、というよりはしたくなかった。家に帰ると高尾との思い出と笑顔が蘇り胸が締め付けられて、部屋のベッドにダイブし啜り泣くしかなかった。