第7章 Turning point
真理子が高尾に視線を移すと高尾は何も答えない。それは高尾と夏美がお互いに難しい顔をして、その場にとどまっていたからだ。
まず静寂を破ったのは夏美で、俯きながら声をかけた。
「…高尾君。…またクラス一緒だね。」
「…うっす。ああ、そうだな…。」
そんな彼等の様子を見て真理子は確信し、口元に手を添えて誰にもばれないように不敵に微笑んだ。
(…ふふ。どうやらWCで喧嘩したって噂はホントみたいね。けど手段は選んじゃいられない。…夏美、あんたとは仲良くしなきゃね。ホントはあんたのこと気に食わないけど。)
ーーそれから夏美と真理子2人を中心として女子のグループが展開していたが、基本真理子は夏美と2人っきりになるようにしていた。
「夏美ってそんなに可愛いのに鼻にかけてないし本当優しいし、料理は上手いし、あたしが男だったら絶対あんたと結婚したいわー!」
真理子に褒められて夏美は恥ずかしそうに微笑む。
「そんな、真理子ちゃんに言われると照れちゃうな。真理子ちゃんはあたしに無い物もってるからあなたが羨ましいよ。」
(何言ってんの、あたしの欲しい物全部持ってんのはあんたでしょ!?)
「もう!相変わらず、夏美は持ち上げるの上手いんだから!そんなやつは、こうよ!」
真理子は心の中では嫉妬の炎に巻かれながら、笑顔を作って夏美の胸を持ち上げて揉む。突然の事で夏美は赤面し照れ隠しで声を荒げる。
「きゃあ、何するの、真理子ちゃん!?」
「なーに恥ずかしがってんのよ。…結構あんのね。清楚なフリして、何人もの男骨抜きにしたんじゃない?」
その場にいた男子達は食い入るようにその光景を見ていた。意地悪な顔をして聞く真理子に夏美は全力で否定する。
「もう!人聞きの悪いこと言わないで!そんなにもてないし!」
「ごめんってば。夏美がムキになるもんだからついね。」
表面的ではあるが2人の仲睦まじい姿に教室中は笑いに包まれていた。
高尾1人を除いては。
(…真理子の奴、一体何企んでやがる!?)