第6章 WC開幕〜Ready Fight!〜
ーSide 高尾ー
夏美ちゃんに一方的に当たって収集がつかなくなり、今にも泣き崩れそうで体が震えていた彼女を1人置いてっちまった。
夏美ちゃんは優しいから俺の事中途半端に受け入れて、それで俺はどんどん舞い上がって、でも辰也さんは越えられなくて、あんなに当たっちまった。
辰也さんを超えるって火神に宣言したけど、マジムズ過ぎてもうどうすればいいのかわからなかった。火神が受け入れるって言ってたワケがわかっちまったよ。
あん時以来喋ったことねーけど、辰也さんはめっちゃイケメンだし、夏美ちゃんにはすっげえ優しくて大事にしてるみたいだし、何か俺には付け入る隙、全くなくてもう虚しかった。
俺は火神みたいに辰也さんの事まで受け入れて付き合いとは思わない。だって俺を1番に見てほしいじゃねーか。だから超えたかった。けど血のつながりには敵わないわ。
けどよ、夏美ちゃん、どこまで俺を困らせる気?あん時、言い訳してくれた方が、いっそのこと嫌いになれて楽だったのによ…。あっさり認めて謝りやがって。
全然嫌いになれねーじゃねーか。
多分ああキツく言ったって、あいつはきっと責任感じてやめねーだろうな。でも俺、あいつと仲直りできるか怪しいし、これからどーゆう顔すりゃいいんだ?
そして、あのWC初日にした秘密のキスの感触が生々しく蘇ってくる。あの、色素の薄い、柔らかくて弾力のある唇の感触が。幾ら口を拭いても消えてくれない。
…ったく、あん時の俺、マジ恨むわ。タイムマシンがあったら、速攻でやめさせるぜ。こんな事になるくらいなら我慢すべきだったぜ。
ーーそして、俺達はキッカケを掴めずに1年が終わって、2年になり、しかも同じクラスにまたなっちまった。
気まずくて笑えなかったわ。