第6章 WC開幕〜Ready Fight!〜
「…やっぱりそうか。おかしいと思ってたぜ。予選とWCでずっと誠凛気にするわ、陽泉と誠凛の試合は食い入るように見るわ、兄貴の為だけに泣くわ、おまけにウチの試合は全部上の空だわ、もう疑いまくり。」
今日の洛山との試合は本当に心から応援してたよ、高尾君…。でも、そんな状態じゃきっと信じてくれない。
私は何を言われても受け止めて、謝るしかない、そう思った。
「…ごめんなさい。」
そして高尾君は冷徹な口調で止めを刺してきた。
「…きっちーこと言うけど、お前、秀徳のマネ失格だわ。」
私は頭が真っ白になるわ、目が点になるわできっとすごい顔してる。頭を下げ続ける私の顔を上げるために、高尾君は強引に私の両肩をつかんで上半身を無理矢理あげた。
「俺と真ちゃんはあと2年ある。けどよ、大坪さん達はもう、今年で、明日で終わりなんだよ!!それを、それを、お前は先輩達の頑張りを他所に、大事な試合に私情を混ぜやがったんだ!!」
高尾君は私を罵倒すると、一気に涙が溢れだして彼の頬を伝っていた。私も高尾君に言われたことが的を得ていて、心にぐさっと刺さる。
私はもう自分の力でたてなくなるほど、体の力が抜けてその場で両膝をつき、さらに尻餅をついた。
「…ごめんなさい、ごめんなさい…!」
号泣しそうなのを我慢して精一杯謝る。けど、高尾君は私が持ってきた荷物を持って1人で帰ってしまった。
1人になってしまった虚しさが悲しみと合わさって、一気に心が押し潰されそうになる。
「…はは、嫌われちゃった。でも当然だよね、秀徳そっちのけで、マネ失格で。」
自己嫌悪し続けていると私は自分が情けなくて、涙が洪水のように溢れ出し、声が枯れるまで泣き続けた。
ーーしばらくしてお兄ちゃんに声をかけられ、私を抱き寄せてお兄ちゃんのいるホテルで事情を話し、一夜を明かした。お兄ちゃんは気の済むまで私を慰めてくれた。
結局高尾君と仲直りすることはできずにWCは終わり、ろくに喋れないまま、2年生になる。