第6章 WC開幕〜Ready Fight!〜
それから夕方の第2クオーターが終わったところでも高尾君は帰ってこなかった。
心配した私は彼の荷物を持って、彼を探そうと控え室を出ようとする。真ちゃんにはそっとしておいた方がいいと言われたけど、それよりも彼が心配で真ちゃんの言う事には従わなかった。
大坪先輩に皆に先に帰ってもらうように頼み、控え室を後にする。そこでちょうどお兄ちゃんと紫原君に出くわす。
「…お兄ちゃん!ねえ、高尾君見なかった!?」
「ああ、彼ならさっき表に出てくのを見たけど。探してるのかい?」
「…うん、なかなか戻ってこないから心配で。」
私が俯いて答えていると、いきなり紫原君が私の顔を覗き込んでくる。
「ふーん、この子が室ちんの妹?左目隠してないんだね〜。」
「へ?」
あまりにも突拍子のない発言に私はびっくりして、俯くのをやめて視線を彼に向けると、彼は子供のように目を輝かせる。
「へぇー、顔、室ちんにそっくりで可愛い〜。てか、肌白くてモチモチしてそうでスノー大福みたい。」
どう反応していいかわからなくて困っているとお兄ちゃんが助け舟を出してくれた。
「こらこら、敦。夏美が困ってるだろ?ごめんな、敦はお菓子に目がないから。」
お兄ちゃんに耳打ちして紫原君について尋ねる。
「紫原君って天然なの?てか、試合とギャップありすぎ!」
「はは。そうなんだよね。でも面白い奴だろ?」
「ま、まあ、そうだねー!」
お兄ちゃんは微笑んでるけど、正直私は苦手なタイプだ。だが今はこんなことしてる場合じゃない。とりあえずお兄ちゃんにお礼言って、手を振りその場を後にした。
私は急いで外に出て、右から周回してちょっと距離があるところで高尾君を見つけた。