第6章 WC開幕〜Ready Fight!〜
ーSide 夏美ー
あの洛山相手に秀徳の皆は本当によく頑張ったと思う。20点差以上もつけられて一時は絶望したけど、諦めない先輩達や高尾君と真ちゃんを見て、私はとても感動し誇らしく思った。
今私はコートを去った彼等の後ろに付いて行っている。もちろん無言だったけど、高尾君が静寂を破った。
「ベスト4かー、まーこんなもんっしょ。よくやったよ、あの洛山相手に。」
「アレ?真ちゃん、傷心ヤバい?」
真ちゃんは黙っている。
でもあなたも余裕全くなさそうだよ。
「…けどワリ。今は、ちょっとなぐさめて、やれねーわ…。」
自分も余裕ないくせに真ちゃんを気遣う高尾君。そして後ろにいたから顔は見えなかったけど、彼が泣いているのは震える声と雰囲気でわかった。
「…フン、だろうな。…だが、俺もだ。悔しいな。…やはり、負けるというのは…。」
真ちゃんも悔しくて悲しんでいるのが、ヒシヒシと伝わってきた。それにより、私も貰い泣きしそうだったけど、先輩達や高尾君達の方がもっと泣きたいだろうから精一杯我慢する。
その時真ちゃんが私に視線を送っているのを感じたけど、自分に余裕がないためか声をかけてくることはなかった。
そうして控え室へ戻ると、皆疲労と負けた悔しさでかなり空気が重かった。スタメンの先輩達は皆泣いている。だけどかける言葉が見つからないから、そっとしておいた。
怪我の手当てやテーピングが必要そうな人もいなさそうで、私は救急箱を片付けながら何かできることはないか考えていた。
まだ使ってないタオルがあることを思い出し、3年生から順に静かにそっと肩にタオルをかけた。
しばらくすると高尾君が大坪先輩に一言言って、控え室を後にした。
…どこに行っちゃったんだろう、でも今追ってもなんて声かけたらいいのかわからない。待つしかないか。
そうしてただ時間が過ぎるのを待つしかなかった。