第2章 二度ある事は三度ある
ー時間は少し遡る。高尾が夏美にノックアウトしてから教室に着いた後、クラスの男子に囲まれ尋問された。
「おはよーっす。ってお前ら一体どうしたの?てか何で俺囲まれてんの?」
「…おい、高尾。お前彼女できたのか?」
聞いてきたのは同じバスケ部の男子だった。1軍ではないが高尾とは結構仲がいい。
「は?一体なんだよ?話が見えないんだけど」
「とぼけるなよ!さっき、すげー美少女をお姫様だっこしてただろ!このリア充め!」
と、左手で肩を組み、右手のグーで高尾の顔をぐりぐりした。
高尾は男女問わず人気者だし、女子に何人か告白されたこともある。
高尾のことを気になってるあるいは狙ってる女子の目と耳は今の話が嘘であって欲しいとギラギラしていた。
「いてーって!違うよ!あの子は彼女じゃねーよ!
今朝チャリ同士でぶつかってあの子に怪我させちゃったから保健室まで送ったんだよ!」
(確かに目立ってたもんな〜。ちょっとやり過ぎたか?ま、後悔してねーけど)
「え、じゃあ違うんだな?」
「おう。てかあの子とは初対面だぜ」
それを聞いたクラスの皆は安堵した者、残念に思った者の二つに別れた。
また、中にはその話を聞いた女子は、知らない子のためにそこまでやるなんて素敵!ってさらに高尾の株が上がった。
一方でまだ見ぬ夏美のことを激しく嫉妬した。
「確かに、あんな子見たことないよな〜」
高尾を囲んだ他の男子が言った。
「ああ、ちょっと話したんだけど、転校生らしいぜ。しかも俺らとタメだし」
と、高尾は教えた。
「マジ!じゃあ俺らのクラスに来るかもしんねーぜ!」
「よっしゃああ、皆でお祈りしよーぜ!」
そう言って高尾を囲んだ男子達は一斉に手を合わせて祈願する。その凄まじい光景に高尾は苦笑いを浮かべながらもここまで男子を夢中にさせる夏美に感心をした。
(ほ、ほんと飢えてるなぁ〜、こえーよ。にしても夏美ちゃんすげ〜な。こんなに早く話題になっちまうなんて。こりゃバトルが激しくなりそうだぜ)
自分も遅れてはいけないと思いながらも、逆に今朝の一件でスタートダッシュができたので密かに優越感を感じていた。