第6章 WC開幕〜Ready Fight!〜
お兄ちゃんがお風呂から出て部屋に入ったタイミングを見計らって、私はお兄ちゃんの部屋のドアをノックすると、お兄ちゃんがドアを開けて私を招き入れる。そしてベッドに共に腰掛ける。
「なんだい、夏美。」
「まだ、話し足りないことがあって…。」
お兄ちゃんはまるでわかってたかような口振りと笑みを浮かべた。
「ああ、大我との事だろ?」
私はお兄ちゃんの目を見つめて、はっきりと言う。
「うん。私ね、もう、あの頃のように戻りたいって言わないよ。」
お兄ちゃんは豆鉄砲を食らったような、意表を突かれた顔をして驚いていた。私の顔を覗き込んで囁くように尋ねてきた。
「…一体どうしたんだい?夏美がそんな事言うなんて。」
「だって、力の差こそ出ちゃったけど、2人とも違う道でどんどん成長していった。それからいきなり昔みたいに戻れっていうのは、冷静に考えれば無理だよね。」
お兄ちゃんは相槌を打ちながら、静かに耳を傾ける。そして私はお兄ちゃんの右手を握って、お願いをするように言った。
「だから今度からは大我とはライバルとして、時に兄弟としてやってけばいいんじゃないかなって思ったの。…だめ?」
お兄ちゃんは私のお願いを聞いて、なぜか左手で口元を抑えて吹き出しそうになっていた。
「…ふ、ふふふ、ははは!…ダメも何もそうするつもりだったさ!」
「え、ちょっと、何それ!?私、言い損じゃない!?お兄ちゃん、騙したわね!?」
私はお兄ちゃんのペースに乗せられていたことに、一気に赤面して声を張る。そんな私をお兄ちゃんは宥める。
「騙すなんて人聞きの悪い。夏美があんまりにも話したがりだから俺は話を聞いただけじゃないか。」
余裕ぶってるお兄ちゃんが悔しくて、私は両腕を組んで頬を膨らませてそっぽを向く。
「…何よ、こっちがどれだけ心配したと思ってんのよ!お兄ちゃんなんかキライ!」