第6章 WC開幕〜Ready Fight!〜
「お兄ちゃん、アレックスは?あと、傷大丈夫?って誰かに手当してもらったみたいだね。」
「アレックスは大我の家に行ったよ。誘ったんだけど、兄妹水入らずで行ってこいって断られた。ああ、ウチのマネージャーにやってもらったよ。」
マネージャーと聞いて私は途端に不安な表情になる。でもお兄ちゃんはすぐ察してくれて、頭を撫でて穏やかな笑みを浮かべる。
「マネージャーって言っても男だよ。安心しろって。」
そう言われて私はホッと胸を撫で下ろす。
「なんだぁ、びっくりしたぁ。」
「ふふ、じゃあ行こっか。…おっと、荷物も重そうだね。」
お兄ちゃんは自然と重い救急箱を持ってくれた。そして、私の肩を抱き寄せ、私に歩調を合わせながら歩き出す。余りのスマートさと完璧なエスコートっぷりに私はお礼を言うのをつい忘れてしまう。
「夏美、言うことあるだろ?」
「…あ、ごめん!ありがとね!」
「ふふ、どういたしまして。」
そういえば、ロスにいた時もよく荷物持ってもらってこんな風に歩いてたってけ…。懐かしい。お兄ちゃんカッコイイからよく友達に羨ましがられて、自慢して調子乗ってたなぁ。
私はつい思い出し笑いをすると、すかさずお兄ちゃんに突っ込まれる。
「おい、何ニヤついてんだよ?」
「ふふ、なーいしょ!」
私はウインクし人差し指を唇に当てて誤魔化そうと思ったけど、お兄ちゃんには全く通じない。
「よし、なら当ててみようか。…昔みたいだな〜。懐かしい!ってとこだろ?」
私は的中されて目が見開く。
「何で、わかんの!?ちぇ、つまんないのー。」
「お前の考えてる事は大体わかるよ。それと、あとは。」
お兄ちゃんはいきなりキザな微笑みを浮かべて、顔を近づけて来る。
「お兄ちゃん、カッコイイー!だろ?」
全部当てられた事が悔しくて、赤面しながらそっぽを向く。
「もう、自分で言ってて恥ずかしくないの!?しかも外れてたら、めっちゃダサいじゃない!」
「ということは当たってんだろ?」
「…!もう、お兄ちゃんには敵いません。」
負けを認めた私にお兄ちゃんは気分良くして不敵に微笑んだ。悔しいけど、表情が様になってて怒るに怒れない。それから他愛のないやり取りを続けてる内に家に着いた。