第6章 WC開幕〜Ready Fight!〜
私は伝えたかった事全部言うと、お兄ちゃんの頬には涙が伝っていた。
あのお兄ちゃんが私の前で涙を初めて見せてくれて、私はお兄ちゃんを愛しく思い顔がさらに綻ぶ。
お兄ちゃんはすすり泣きながら私を更に強く抱き締めてくれた。そして、まるで恋人のように甘く優しい声と口調で囁く。
「…全く、お前には本当に敵わないな。夏美、お前が俺の妹でいてくれて、幸せで、たまらないよ。どんなことがあっても、俺が一生守るからな。」
恥ずかしさで聞くに堪えないセリフを吐かれて私は顔が沸騰するほど赤面しながら、口を尖らせて静かに反抗する。
「…もう!なんでこうゆう時もキザなセリフが言えんのよ!?お兄ちゃん離れ、またできなくなっちゃうじゃん…。」
目を逸らす私にお兄ちゃんは頬にキスをしてきた。
声を出さずに反抗的な表情をすると、不敵な笑みを浮かべる。
「〜!!」
「当たり前だろ、大事なお前を何処の馬の骨ともわからない奴には渡さないよ。」
その顔を見て私は一つ確信した。
大我に告白されたってお兄ちゃんに言ったら、絶対仲直りできないじゃん…!てか、大我がボコボコにされかねないから、黙っとこ…。
「はは、全くお前らは仲がいいな!見てるこっちが恥ずかしいよ!」
アレックスが母親のように優しく微笑み、私とお兄ちゃんの頭をぐいっと押して撫でる。
「アレックス、子供扱いはやめろって言ってるだろ。」
「いーじゃねーか、いくら大きくなってもお前らはあたしの大事な愛弟子だよ!あ、夏美は天使な!」
「もう、アレックスったら。」
そうして私達3人はしばらく笑いあっており、何気なく腕時計を見ると、もう10分で集合時間になるところだった。
「あ、いっけない、もうこんな時間!?お兄ちゃん、アレックス、もうあたし行かなくちゃいけないの、それじゃね!」
そう踵を返した矢先にお兄ちゃんに腕を掴まれた。