第6章 WC開幕〜Ready Fight!〜
目を開けるとお兄ちゃんが私を庇ってくれていた。男は右手で別の誰かから投げつけられたボールをキャッチしたため、平手打ちをかませなかったらしい。
「オイオイ、いきなりオレにボール投げつけるなんていーい度胸だな。リョータぁ。」
「黄瀬!?」
どうやらその男とボールを投げつけた人、黄瀬君は知り合いみたい。黄瀬君いわく男の名は灰崎祥吾と言うらしい。他にも彼について教えてくれたり、一触即発な雰囲気で喋ってたりしたけど全てを聞いている余裕はわたしになかった。
私はようやく恐怖から解放されると腰が抜けて両膝をつき、お兄ちゃんが振り向いてしゃがむと力強く抱きしめてくれた。
「夏美…!怖かっただろ…?もう大丈夫だからな…!」
お兄ちゃんの声を聞いたら一気に涙が溢れ出し、私もすぐにお兄ちゃんを抱きしめ返して、子供のように泣き喚いた。
「…ぐすっ、ぐすん。ふぇ、お兄ちゃん、怖かった、怖かったよー!!う、う、うわぁぁぁぁん…!!あ、ああん…ぐすっ。」
「よく、頑張ったな夏美…!」
お兄ちゃんは私の背中を優しくさすりながら、落ち着かせるように囁いた。私はお兄ちゃんの腕の中でしばらく泣き崩れる。
そして私がお兄ちゃんにしがみ付いて泣いている間に灰崎と黄瀬君はこの場を去っていた。大我とアレックスが私の元へかけ寄ってきてくれた。
「「夏美、大丈夫か!?」」
「…ぐすっ、うん…!大我、アレックス…!」
そしてアレックスが私の顔に目線を合わせて中腰になり、頭を撫でながら私をあやす。
「しっかし、夏美、驚いたぞ!お前が灰崎って奴の舌を噛んだ時は!意外とやるじゃねーか!本当、よく頑張ったよ…!」
まだ体と声が震えているけど、アレックスに褒められたら少し安心してきたので、すすり泣きながら答えた。
「…だ、だって、あいつにやられるぐらいなら殴られた方がマシって思って、そ、それで…!」