第6章 WC開幕〜Ready Fight!〜
当然私は嫌な予感がして、体が強張る。彼はアレックスを離して、私に馴れ馴れしく近づいてきた。
「へぇー、なかなかいーじゃん。あっちの金髪ねーちゃんより弱そうだし、もうちょいグラマーだとなおよかったけど、十分楽しめそうだ…。」
柄の悪い男は私を見ながら右手の親指を立ててペロッと舐める。そして肩を馴れ馴れしく組んできて、私は恐怖で声も出せない。
「「やめろ!!夏美に何するんだ(しやがんだ)!?」」
「…!!お兄ちゃん、大我ダメ!」
痺れを切らしたお兄ちゃんと大我が男に勢いよく殴りにかかってくる。本当は殴ってやっつけて欲しいけど、問題になっちゃうから私は2人にやめるように声を振り絞った。
「おいおい、いいのか〜?ここで俺を殴っちまったら大好きなバスケができなくなるぜ?」
男に言われて大我とお兄ちゃんは図星をつかれて停止して、眉間にシワを寄せる。
何って卑劣な奴なの!!なにもできなくて、悔しい!!
「へ、何もできねーでやんの。さぁ、楽しもーか。」
男は顔を近づけ舌を侵入させようとしてきた。
私は怖いけど、こんな奴にされるくらいなら殴られた方がマシだと思い、思いっきり男の舌を噛んだ。
「…!!いってぇー。っざけんなよ、このアマ!!」
「ひ!」
「「「夏美!」」」
男は肩組を解いて左手で口を押さえ、右手で平手打ちをくらわそうとした所で私は目を瞑った。
目を瞑ってたからよくわからなかったけど、素早く誰かが私の目の前にきて、男から庇ってくれた気がした。
そして男はなぜか平手打ちをかますことなく、制止していた。私は力強く閉じていた目を開いて状況を確認する。