第6章 WC開幕〜Ready Fight!〜
私も大我も早くお兄ちゃんに会いたくて走っていると、いきなり大我が話を振った。
「ところで夏美!なんで、一緒に仲直りしようって言ったんだ?また喧嘩したのか?」
一旦ストップして大我の質問に私は目を俯いて答えた。
「…お兄ちゃん、タイムアウトで泣いてたでしょ?私、ずっと戻りたいってばっかり言ってたから、それでさらに追い詰められてたのかなと思って…。だからあたしお兄ちゃんに謝らなくちゃって。」
私が泣きそうになって言うと大我は私の頭を撫でるというより、ぐいっと押してきた。
「ばーか。辰也はそんなに器小さくねーよ。妹のお前がわかってなくてどーすんだ。」
バカと言われて正直ムッとしたけど、大我の不器用な優しさを感じる口調と声で、私は心が暖かくなる。
「…ありがと、大我。なんだか私より大人になっちゃったかもね。」
私が微笑むと大我はいつものように赤面して、視線を私からそらす。
「な、何言ってんだよ。とにかく辰也んとこまで急ぐぞ!」
「うん!」
勢いよく返事して、私達はまた走り出す。このいつものようなやり取りに、私は大我に告白されたことが本当だったのか疑ったくらいだ。
いや、私はあえてそう思いたかっただけかもしれない。
ーーー私達は表に出るとお兄ちゃんらしき人の背中を発見して、また急いで向かった。
するととんでもない光景を目の当たりにし、顔が一気に青ざめた。
お兄ちゃんの顔は腫れてて、アレックスが知らない男に首を絞められていたのだ。
「誰だ、テメーは!?今すぐ、放せよ、オイ!!」
「お兄ちゃん!!アレックス!!」
知らない男は大我にガンを飛ばす。
「あぁ?ってお?お前…?さっきアツシに勝った奴じゃん、見てたぜ。…けっこう、やんなァ…。」
紫原君を知ってる!?この人、一体!?
そう言うと、次に私を舐めるようにジロジロ見てきた。