第6章 WC開幕〜Ready Fight!〜
誠凛は2-3ゾーンをやめて、辰也にトリプルチームを仕掛け残りの2人でインサイドを守る形を作った。
(お兄ちゃんに極力打たせないようにするつもりなのね。中はガラ空きになるけど。…ってあれ、大我の動きが今までと違う?)
そして紫原がカウンターを仕掛けた時に目を見張る出来事が起こった。
高尾が興奮し、緑間は冷静に何か言ってるが夏美はゾーンに入った火神に魅入って何も聞こえなかった。
(ウソ!?あの紫原君のダンクを止めた!?一体どうしちゃったの!?…それにさっきと気迫がまるで違う。)
夏美は口を半開きにしていると辰也のプレーにも度肝を抜かれる。
(3人抜きした!?全く、動きが綺麗過ぎてどれが本物なんだかわからないくらいだよ!)
辰也をベタ褒めしてるうちにまた信じられないことが目の前で起こっていた。
(お兄ちゃんの陽炎のシュートを止めた!?しかも滞空時間が長い!!)
それをきっかけに火神のスーパープレイに観客全員の目が見張りっぱなしになる。
(お兄ちゃんと大我のマッチアップ!…ウソ!あのお兄ちゃんが全く歯が立たないなんて…!しかもあそこからダンク!?)
ここで陽泉がタイムアウトを取ると、彼等が何か揉めだしたので夏美は目を凝らす。
「一体どうしたんだろって…え?お兄ちゃん!?」
次の瞬間夏美は口を押さえて目を限界まで開くほど驚く。高尾も口と目がこれ以上ないほど開いていた。
(な、辰也さん、紫原にゲンコツかましたぞ!?何があったかしんねーがおっかねー!)
辰也が紫原を殴り、胸ぐらを掴んで何かを訴えている様子だった。紫原に何か言われたのか辰也は涙を流す。夏美は何があったのかここで察しがついた。
(お兄ちゃん…。やっぱり辛かったんだね…。何も言ってくれなかったのは、戻りたいばっかり言ってて追い詰めちゃったから?ごめんね…。あたし本当に我儘だったね。早く、会って謝りたい。)
夏美は涙で視界が曇るが高尾と緑間にばれないように、必死に瞬きさせて一生懸命乾燥させた。