第6章 WC開幕〜Ready Fight!〜
(また火神と辰也さんがマッチアップか!?陽泉はとことん辰也さんで攻めるつもりだな。)
高尾は食い入るように2人を見ていた。そしてまた辰也に圧倒されて思わず声が漏れる。
「な、なんだ!?火神のブロックをすり抜けて、ボールがリングに入った!?」
驚く高尾に夏美は冷静に言い聞かせる。
「…今のは陽炎のシュート。」
「へ?ミラージュ?てか、一体どうやってんだ!?」
夏美は意地悪な笑みを浮かべ、人差し指を唇に当てながらいい渋る。
「すぐ教えちゃったらつまんないでしょ?」
「ちぇー、つれねーな。」
(へへ、いつもの仕返しできちゃった!思う存分悩んじゃえ、高尾君!)
立場が逆転したことに気分をよくした夏美はいじける高尾に微笑んで、試合の観戦を再開すると火神が交代して一瞬驚いたが理由はすぐに思いついた。
「あららー?火神交代か?」
「…大我はあんなデカイなりして優しいからね。」
「どういうことなのだよ?」
「大我はまだ勝負と情がわけきれてないんだと思う。」
夏美は首にしているお揃いのリングのネックレスを無意識に握り締めながら言うと、高尾は即座に尋ねた。
「兄弟の情ってヤツだろ?」
夏美は肯定の意味を表してうなづく。緑間は眼鏡を押し上げて夏美に尋ねた。
「よくわからないが、要するに火神と氷室の兄は決着をつけるのだろう?氷室、お前はどっちに勝ってほしいのだよ?」
「…!はは、真ちゃんからそんなこと聞かれるとは思わなかったよ。私は、どっちが勝ってもいい。だけどこのゲームが終わったら仲直りしてほしい、ただそれだけよ。」
夏美が切なそうな声と顔で言うと、緑間も高尾もこれ以上は何も言わずに試合観戦を再開する。
その後の展開は紫原のOF参加によるゴール破壊、木吉の交代、誠凛の新フォーメーションのS.A.Mディフェンス実戦により、波乱と猛追の連続であった。第3クオーターは47対43の陽泉リードで終了した。