第6章 WC開幕〜Ready Fight!〜
第3クオーターは黒子は引っ込められ、そして夏美の予想通り辰也のマッチアップは火神であった。それにより辰也のオーラが一気に変わって、緑間が警戒してしかめっ面をする。
「真ちゃん、どったの?そんな怖い顔しちゃって?」
高尾が声をかけると緑間は眼鏡を押し上げて言う。
「陽泉の12番が氷室の兄だったな?」
「ええ、そうよ。どうしたの、一体?」
「彼は、俺達と遜色ないほどの雰囲気を纏っていると思ったのだよ。」
緑間の発言に高尾と夏美は辰也がキセキの世代と同格であることを緑間が認めたことに心底驚く。
そして夏美は緑間に自分の大好きな兄を褒められたことが嬉しくて堪らず口元が緩んでしまう。
「ええ、お兄ちゃんは強いよ。だってWNBA出身のアレックスの教えを請いて、毎日の様にストリートで技を磨いてきたんだもの。それにキセキの世代の真ちゃんに褒められるなんて、お兄ちゃんが誇らしい!」
緑間は何時ものごとく鼻で笑う。
目を輝かせて不適に微笑む夏美に高尾はなぜか胸に違和感を感じた。
(なんか、夏美ちゃん、急に兄貴の事になったら顔がめっちゃワクワクしてんのな。いつもの事なのに、なんでだ?なんで、こんなにムカつくんだ?)
ムカつく理由を考えるのを置いといてとりあえず試合観戦に集中する高尾。そして辰也の美しく無駄のないプレイに圧倒されるも魅了される。
(な、なんだ今のフェイク!?途中まで完璧シュートするとしか思えなかったぜ!?しかも日向さんと火神で挟み撃ちしたはずなのに、動きが鮮やかすぎて2人とも反応できてないぜ!?)
一方夏美は久しぶりに見る辰也のプレイに興奮しっぱなしであった。さらに辰也への歓声で顔がかなりにやけていた。
(やっぱり、お兄ちゃん、すごい!!てかかっこいい〜!!相変わらず様になってるよ〜!!)
もう、夏美の目には辰也しか映っていなくて、ハートマークが彼女の周りを飛んでいた。高尾はもちろん面白く思うはずはない。