第6章 WC開幕〜Ready Fight!〜
第2クオーターは誠凛のOFから始まり、相変わらず陽泉の圧倒的なDF力やインサイドの強さに苦戦していた。が、しかしここで終わらないのが誠凛である。
木吉が後出しの権利でゴール近くに来た火神にパスを出すが、木吉のマッチアップをしてたはずの紫原は即座に反応して火神と力比べでボールを押し合う。
ここで得点しなければ誠凛は一気に精神的にトドメをさされる。
誰も皆終わりだと思った時に活躍するのが、彼、黒子だ。火神はペイントエリア付近に来た黒子に渾身のパスを出す。
(あれってもしかしてシュートを打とうとしてるの!?彼、シュートはダメダメだったはずよ!?)
他の二人も夏美と同じ事を思っていたように、観客や陽泉のメンバーもそう思っていた。
だが彼は横を向き左手にボールを乗せ、右手でパスを出すように上へ押し上げて放物線を描く。紫原は止められず、これが誠凛の初得点であった。
(あのフォーム、見たことないけど、結局入ればいいんだからね。それにしても紫原君は十分止められる高さに手があったのに、どうして止められなかったの?)
夏美はシュートのスペシャリストに尋ねようとしたが、彼も口が半開きになって驚いている。多分彼も理由はわからなそうなので聞くのを辞めた。
第2クオーターは黒子のお陰でなんとか攻められる形になり29対17でまだ望みがある形で終了し、インターバルに入る。
高尾は背伸びからあくびをして、両手を首の後ろで組んでから話を切り出した。
「いやー誠凛無得点で終わるかと思ったけど、まさか黒子がシュートとはね。天地がひっくり返ったみたいだぜ。このまま、いけるといいんだけどな。」
夏美は顔をシュッとさせて、目線はコートに向けながら高尾に冷静に言い聞かせた。
「…いいえ。後半はお兄ちゃんが動いてくるはず。前半は目立ったプレイしてないけど。ヤバいのはここからだよ。」
(多分お兄ちゃんのマッチアップは大我になるはず。
私はどっちが勝っても文句はない。でもお兄ちゃんは決着着いたら兄弟やめたいって言ってたし…。
あの頃に戻るのはもう無理かもしれない。けど、楽しくやるのはこれからでもできることでしょ、お兄ちゃん?)
複雑な顔でコートを睨む夏美を高尾は呆然と見つめていた。