第6章 WC開幕〜Ready Fight!〜
ちょうど二階席の1番前が3席空いていたのでそこに座る。もう両校の選手達が整列し終えていて、夏美は辰也と火神が何か喋っているのが見えた。
(何話してるんだろう…?一つ言えることは、どっちも本気だ。特にお兄ちゃんは冷静なくせして目がギラギラしてる…。)
(すげーな、辰也さん。雰囲気が只者じゃねーぜ。でも、デートの時の方がもっとヤバかったけど。)
高尾と夏美は辰也に圧倒されながらジャンプボールを見守る。この時緑間はある予感をしていた。
そう、紫原のジャンパーバイオレーションが起こることを。
「「な、嘘でしょ(マジかよ)!!」」
紫原の事をよく知らない2人は彼を見て口を限界まで開けて、また声を揃えて驚いてしまう。
「お前らまたハモっているのだよ。仲良いのもいい加減にするのだよ。」
散々2人にからかわれた緑間は仕返しをする。高尾には効果がないが、夏美には十分だった。
「だってさ!俺達案外相性いいんじゃね?」
高尾は意地悪な顔でニヤニヤして夏美の反応を見る。
「ちょっと、やめてよ、高尾君!それに真ちゃんまで!!人の事からかわないの!」
期待通りに赤くなってムキに反応する夏美に高尾は吹き出し、緑間は鼻で笑う。夏美は何とか話題を変えようとする。
「そんなことより、真ちゃん。ジャンパーバイオレーションなんて、高校生でやったの見るなんて始めてだよ。」
緑間は眼鏡を押し上げて解説をしてくれた。
「ああ、紫原は身長だけでなくウィングスパンも常人より遥かに長いからな。おまけに反射神経もいい。ただ、デカイだけじゃないのだよ、あいつは。」
「マジかよ、体格だけでも反則めいてるのに。正直誠凛厳しいんじゃね?」
「ああ、全くその通りなのだよ。…今ちょうどヤツの反射神経の良さが存分にわかるぞ。」
緑間に促されて2人は紫原に注目すると、まさに彼の言われた通りだった。
どんなにパスを早くしても、3Pラインより内側では彼に止められる。
それならカウンターをかけようとした矢先に彼は自陣のゴール下から動かないため、付け入る隙が全くない。
そして第1クオーターはなんと18対0で誠凛は今だ無得点のまま終了した。