第6章 WC開幕〜Ready Fight!〜
緑間が2人を迎えに控え室のドアをノックすると、高尾は素早く夏美を離して、返事をしドアを開けた。
「お前ら、もうすぐ時間だぞ。先輩達が待っているのだよ。」
「はいはーい。オッケー、サンキューな真ちゃん。」
「もうこんな時間!?ありがと、真ちゃん。あたしは準備があるから先に行ってて!」
夏美が救急箱とクーラーボックスを持とうとすると高尾と緑間は率先として手伝った。夏美は全力で遠慮するものの2人が聞く耳を持たずそのままコートへ向かう。コートに着いたところで夏美は2人にお礼を言う。
大坪達は時間通りに来たので特に彼等を咎めたりせず、そのままスタメンと控え選手達はアップを開始する。
アップが終わり両チーム整列し挨拶をし終えて、秀徳のWCでの初戦が開始される。
(ウチは洛山高校までキセキの世代がいるチームとは当たらない。油断しなければ問題なく準決勝に行けるはず!!)
ーーー夏美の予想通り、秀徳は問題なく初戦からどんどん勝ち進んで行く。試合が終わりフリーになる度に体育館の中央広場にある対戦カードと試合結果を確認していた。
3回戦が終わり準々決勝のカードが発表された時に夏美は至極興奮して目が輝いていた。待ち望んでいた誠凛と陽泉の試合が実現されたから。
(やった!!お兄ちゃん、よかったね!私もこれで四六時中悩まなくてすむんだわ!しかもその時間フリーだから見に行っちゃおっと!)
その時一緒にいた高尾は予選の時からの不安が蘇ってしまう。
(予選から誠凛を気にしてたのはやっぱり、この事なのか?ウチの試合、ちゃんと応援してはいるけど、正直どっか上の空だったし。)
高尾は向けたくもない疑いの目をして、夏美に尋ねる。
「なぁ、夏美ちゃん。」
難しい顔をしている高尾に夏美は不思議に思ってキョトンとした顔をする。
「どうしたの?どっか具合でもわるいの?」
彼女の顔を見ると高尾は良心が痛めつけられて結局何も言えず、目を逸らしながら謝る。
「いや、なんでもねぇ。わりいな。」
様子がおかしいとは思った夏美だが、それどころではなかったので放っておいた。