第2章 ご主人様とバスタイム(前編)
「奈々花は掃除が得意ですね」
「貴久さまに快適に生活していただくため当然のことです」
スーツの上着を脱ぎ、ネクタイも外した貴久さまが浴室を眺めながらそう言う。
自分で言うのもなんだが、わたしは掃除が得意な方である。
「あなたのおかげで毎日充実した生活を送れています」
貴久さまはこちらへ近付くと優しく頭を撫でてくれた。
私の方こそ、貴久さまには感謝してもしたりない気持ちでいっぱいだ。
「一緒に入りませんか?」
「え?!」
貴久さまの突然のその申し出に思わず驚いた声をあげてしまう。
今まで一度もそんなこと言ったことないのに。
やはり少し酔っているのだろうか。
「いえ、わたしはもう入浴は済ませているので」
彼が帰宅するまでに入浴を済ませ、再び化粧をして身支度を整えるのもこのひと月で習慣化していた。
「今更恥ずかしいのですか?」
意地の悪い笑みを浮かべながら貴久さまが訊ねてくる。
恥ずかしい…に決まっているけれど何度も裸を見られているのだから、その意見は通らないだろう。
「か…かしこまりました」
震える声で返事をすると再び優しく頭を撫でられた。