第2章 ご主人様とバスタイム(前編)
部屋に着くなり彼は私を抱き締めると荒々しく唇を奪ってきた。
「っふ…んんっ」
突然のことに反射的に後ずさるが、背後のドアに体を押し付けられて吐息すら奪うようなキスをされる。
貴久さまの吐息はほんのりお酒の匂いがした。
「…少し飲まれてきたのですか?」
唇が離れた頃、私は息を乱しながら問いかける。
「ええ。お酒臭かったですか?」
「いえ…」
私は小さく首を振る。
ちっとも酔っていない様子だけど、貴久さまはお酒に強いのだろうか。
飲んだら起たないという人がいるらしいけど、いま密着したとき彼のものは布越しでもしっかり存在を主張していた。
「アルコールを抜きたいのでお風呂に入ります。お湯をためてもらえますか?」
「かしこまりました」
私は鞄をクローゼットにしまい、部屋に備えられているバスルームへと早足で向かった。
お屋敷自体も広いけれど、バスルームも一般家庭のものに比べれば随分広い。
全身が写るほど大きな鏡と、大理石の床。
白い浴槽は丸くて手足を伸ばして入っても、一人では広すぎるくらいのスペースがある。
毎日掃除するのが大変なくらいだ。
私は蛇口を捻り浴槽にお湯を溜める。
大きいので溜まるまでに時間がかかるから、その間に1回くらいは抱かれるかもしれない。
そう思っていると、脱衣所の扉が開く音がした。