-----フクオカファーストハイスクール-----
第1章 うるさいギタリスト
今日は音楽の授業がある。でも、前ほどいやじゃない。できるようになったから。
チャゲとのギターレッスンは、音楽の授業でめざましい効果を発揮した。
だってチャゲは、ひとつずつ、何回も、何回間違えても間違いを笑わず、
何回聞いても、嫌な顔をしないで、できないところを教えてくれる。
そして、楽しい話を途中でいっぱいしてくれる。
コードも一日で二つ三つは覚えられたし、
リズムも、チャゲが持っていた小さな電子メトロノームを使って、まず弦を押さえずに少しずつ練習したら、うまく刻めるようになった。
まだコードの練習だけど、曲も今できるコードだけでリズムを刻む練習をした。
音楽室に向かう足取りも、自信はまだあまり持ててはいないけれど、
前よりは絶対に軽くなった。
いつも通り先生と個別でコードの練習を始めたけど、
早速前やったコードの復習をすると、たまに失敗するけど全部弾くことができた。
おまけに今日先生が教えるはずだったコードも、チャゲともう練習をしていたから弾けた。
残すは今回の楽譜で最難関、「F」のコードだ。
あ、あとFができないから、完全な曲全体はまだ通して演奏できてないけど。
「坂井さん、すごいですね。たくさん練習したんですか?」
「まぁ、はい。秀之くんに教えて貰ったんです」
そう言ってチャゲに目をむけると、彼はウィンクを返した。
「そうでしたか。練習の成果がばっちり出ていますね。心配していたのですが、良かったです。
今日Fを練習したら、もう次の時間からはみんなと自主練に入っていいですよ」
やった。
先生とFのコードを練習しているときも、以前と違って周りの反応をあまり気にしなくなった。できるようになったから。
ありがとうチャゲ。