-----フクオカファーストハイスクール-----
第1章 うるさいギタリスト
さんざんだ。今日の音楽は7時間目だったのだが、
放課後まで暗い気持ちを引きずっていた。
部室に行く気力もなく、ただ廊下のすみの窓から外を眺めていた。
眺めてすら居ないのかもしれない。現実から目をそらす、物理的にそういう行動を取っているだけかも。
「エリー?」
ん。
「エリー・・・?ねぇ、エリー」
この声で現実に引き戻されてしまった。
「何」
現実への意識が飛んでいっていた自分は、とりあえずこういう返事しか返せなかった。
「その・・・さ」
「一緒にギター、練習しない?」
誰かと思えば、チャゲだ・・・こいつが話しかけてくるなんて・・・
「え?」
今度は言われていることを理解するのに時間がかかり、とりあえずこういう返事しか返せなかった。
「ギター、俺と練習しようよ。
いっつも音楽終わった後、うなだれて教室まで戻ってて・・・こないだ4時間目に授業あったときは、そのまま飯も食わず、昼休みずっと机に突っ伏してたろ?」
そんなところまで見られてたのか。
「さっきも教室までとぼとぼ歩いてたし・・・だから、ギター出来ないってことですごく悩んでるんじゃないかって・・・
ギターなら俺教えられるからさ。それで気持ちが楽になってもらえたらなってさ。」
何というか、ここまで下に見られてたのか。当たり前だけど。
「エリーが嫌ならいいんだよ。断ってくれてもかまわない。俺はただ力になれたらなって思っただけだから。」
どうしようか。
でも、この調子じゃとてもじゃないけど自力では無理だ。
このままずっとこれじゃ嫌だ。まだ授業は何回も残ってる。
「・・・教えて・・・もらえるかな」
「よっしゃ。OKなのね!」
チャゲは明るく返事を返した。
「じゃ、いつから始める?もう今日の放課後、部活終わったら始めちゃっても良いよ!」
こうして、私はチャゲからギターを教わることが決まった。