-----フクオカファーストハイスクール-----
第1章 うるさいギタリスト
クラスはまぁよしとしよう。しかし、こんどは意外なところで苦労している。大変苦労している。
あんなに好きだった音楽の授業。今は苦痛だ。
今習っているのは、クラシックギター。
簡単な課題曲を覚えて、最後の授業でテストをすることになっている。
左手で、6本あるうちの何本かの決まった弦を押さえて、そのまま右手に持ったピックで弦をはじくと和音が出る。
簡単に言うと、和音が出る弦の押さえ方ーコードを何通りか覚えて、
コードで書かれた楽譜の通りに、押さえ方を変えながらリズム良く弦をはじかなければならない。
それが、私は大の苦手だった。どれもできないんだもん。
コードが覚えられない。弦を押さえても、きちんと響かない。右手でリズムがとれない。
授業中にコードが覚えきれず、家に音楽の教科書を持って帰って復習するも、やっぱり覚えられない。
授業でやったことが全然出来なかったから放課後ギターを使って練習したかったけれど、
自分の部活もあるし、放課後に音楽室を使う部の邪魔になると先生に言われた。
最悪だ。
もうみんなテストのための課題曲を練習しているが、未だに満足な音が出せない自分。
授業が始まると
「坂井さん、こちらでコードの練習しましょうか」
先生が言い、みんなと離れたところに、いすを持って行く。
課題曲自習に入った、数回前の授業からずっとこれだ。
最初に習った一番簡単なコード、「C」でさえ、鳴らしてはいけない弦をよく鳴らす。
「F」なんか最悪だ。人差し指の腹で6本すべての弦を押さえて、さらに他の所も押さえなくてはならない。できっこないよ。
自主練習に励むみんなの中で、ひとり先生と一緒に一番簡単なコードを練習する自分。
テストもできるはずがない。だけど、現在の自分をみんなに見られているのが一番嫌だ。
きっと笑われてる。でもできない。
どうしよう。どうしようもないの?
2年生、順調なスタートを切ったと思っていたのに。うまくできると思っていたのに。
こんなところでつまずくなんて。