第1章 1咲目,命の恩人
信じられない、という顔をした私を見て、エルヴィン団長が口を挟む。
「覚えていないのか?君は昨日、立体機動装置を使って巨人を10体倒した、とリヴァイから報告を聞いているんだが」
「あ…すみません…立体機動装置をつけて、舞い上がったところまでは覚えているんですが…その後が全然…」
「ふむ…既に無我夢中だったようだな…」
少しの沈黙のあと、私は口を開いた。
「あの…私はこれから…どうなるのでしょうか…」
「ふむ…そうだな…」
「調査兵団に来い」
そう、リヴァイさんは即答した。
「え…?な、なぜ…ですか…?」
「お前の力は役に立つ。それだけだ。親が兵士ということもあって、体は鍛えてあるようだしな」
役に…立つ…?
「私は…貴方の役に立てるのですか…?」
「だからお前を勧誘してるんだろうが。もっとも、お前が嫌だと言っても入れるがな」
「おいリヴァイ、それはいくらなんでも…」
エルヴィン団長が止めに入ろうとしたのを、私は遮った。
「入ります!私…調査兵団に入団します!」
私ははっきりと、そう告げた。
エルヴィン団長とリヴァイさんは少し目を見開いた。
「いいのかい?調査兵は一番死ぬ確率が高い。見たところまだ10代だろう。もっと他にいい職が…」
「いいんです!私、人類のために、何かがしたかったんです。そして…私の死んだ家族のためにも…私を助けてくださったリヴァイさんに、恩返しがしたいんです!」
「…恩返しなんてあまっちょろい理由だけでやってけるほど調査兵は甘くねぇぞ」
「わかっています。でも、やらせてください!」
私は強く懇願し、頭を深く下げた。
そして、リヴァイさんが口を開いた。
「おい、エルヴィン。こいつの入団手続きの準備をしておけ」
「リヴァイ、何をするつもりだ?」
「こいつに入団テストを受けさせる」
「入団テスト…?」
「あぁ、本来そんなものはないが、お前は特例だ。だから特別に俺が審査してやる。いいな、エルヴィン」
「ダメだと言ってもやるんだろう…」
エルヴィン団長は苦笑しながら了承の意を示した。
「そういえば、君の名前を聞いていなかったな」
「あ、申し遅れました。私の名前は、イリアーデ・ジャンヌと申します。イリアとお呼び下さい。歳は19です」