第1章 1咲目,命の恩人
次に私の目に入ってきたのは、なぜかあの悲惨な惨状ではなく、部屋の天井だった。
どうやら、私はベッドに寝かされているみたいだった。
体中が痛い。
「うっ…ここ、は…」
「おや、目を覚ましたか」
聞きなれない男の人の声がして、そちらを向いた。
そこには金髪で蒼い瞳を持ち、端整な顔立ちをしている背の高い男の人だった。
「あの…貴方、は…?」
「私はエルヴィン。エルヴィン・スミス。第13代調査兵団団長だ。そしてここは、調査兵団本部だ」
「ちょ、調査兵団団長!?っ!」
驚きの余り飛び起きてしまった私の体は悲鳴をあげてうずくまった。
「そんなに動いたら体が壊れてしまうよ。肋骨にヒビが入っているのだから、もう少し安静にしていなさい」
「は、はい…ありがとうございます…あの…なぜ私が、調査兵団本部に…?」
「ある男が君を保護してきてくれてね」
「ある男?」
誰だろう…近くに調査兵はいなかったし…。
私が考えを巡らせていると、一人の青年が部屋にノックもなしに入ってきた。
あの私を助けてくれた青年、リヴァイさんだった。
「り…リヴァイさん!」
生きていたんだ、と、私は心から嬉しく思い、笑みを浮かべる。
「リヴァイさん、どうしてここに?」
「彼は、調査兵団の兵士だからさ」
そう答えたのは、エルヴィン団長だった。
調査兵団の兵士…?
私が戸惑っていると、彼は忌々しそうに口を開く。
「ちっ…少ししかねぇ休みに私服で買い物行ったらこの有様だ。立体機動装置無しでやったら20体しか倒せなかったぞエルヴィン」
「まぁ落ち着け、リヴァイ。20やれたなら充分だろう。目標が高いな、"人類最強"は」
リヴァイさんは人類最強という言葉に反応し、さらに不機嫌そうになった。
そして私に向き直ると、凄い形相で睨んできた。
「ビクッ!?」
「おいお前…なぜ立体機動装置の使い方を知っていた」
そう聞きながら近づいてくるリヴァイさん。とてつもなく怖い。
「あ…父が、駐屯兵でして…立体機動装置の使い方が載った本を読んで…覚えていました…。実際に使ったことはもちろんありません」
「ほう…ならお前は、全くの素人だったと」
「は、はい…」
「ならなぜお前は、壊れた立体機動装置を使って巨人を10体も倒せた」
え…?私が巨人を…?