第1章 1咲目,命の恩人
ミシミシと身体が軋む。巨人に握りつぶされるのだろう。口の中に運ばれていく。食べられるのだろう。
そんな考えが頭の中を埋め尽くしていた。
だが、いつまで経っても自分が考えていた結末が訪れないことに疑問を抱いた。
目をあけた瞬間、そこに広がっていたのは
血で染めた刃を持つ、血まみれの青年だった。
私の身体は巨人の手から離されていて、私は何とかその地に足をついて立った。
まだ足がある。感覚もある。無傷で、生きている。
どういうことだろうと疑問に思い、その青年に声をかけた。
「あの…貴方が…私を助けてくれたんですか…?」
その青年は無言で私を見ると、口を開いた。
「…お前、死にてぇのか?巨人の前で逃げもせず放心状態になる馬鹿がどこにいる」
その青年は私を罵倒した。どうやら、結構口の悪い人のようだ。目つきも鋭く、射抜くような視線に私は小さく身体を震わせた。
けれど、私を救ってくれた人には変わりなかった。
「あの…ありがとうございました。このご恩は一生忘れません。お名前を聞いてもよろしいですか?」
私が彼に名前を聞くと、細く鋭い目を少しだけ見開いた。
「お前、俺の話を聞いていたのか?さっさと逃げろって言ってんだよ」
「せめてお名前を聞かせてください。命の恩人の名前も知らずに、逃げられません」
彼は一向に逃げようとしない私を見てため息を吐いた。
「…リヴァイだ。答えてやったんだからさっさと…」
名前を答えてくれた青年、リヴァイさんが言葉を紡いでいる途中、巨人がすぐ近くまで迫って来ていた。
「り、リヴァイさん!危ないですから一緒に逃げましょう!?」
「あ?お前一人で逃げろよ。港はもうすぐそこだ」
「だ、だったらリヴァイさんも行きましょうよ!」
私の説得も虚しく、彼はため息を吐いたあと、私を置いて巨人に立ち向かって行ってしまった。
そんな彼を見て、家族が殺されていく光景が蘇った。
1人、また1人と死んでいくのをただ見ている。
そんなの…もう嫌だ!!
そう強く思った、その瞬間。身体が勝手に動き、亡くなった駐屯兵が身につけていた立体機動装置を自分に装着した。
実は、私の父は兵士だった。故に、使い方は知っていた。
私は勝手に動く身体で、大空へと舞い上がった。
あぁ、なんて綺麗な空だろう。
そんな呑気なことを考えたところで、私は意識を手放した。
