第1章 1咲目,命の恩人
私はこの日、父と母、兄と共に街へ買い物に出ていた。
大好きな活気ある街で、皆と笑って過ごしていた。
何一つ、変わらない日々の中の1日であるはずだった。
でも突然、大きな、けたたましい爆発音と共に、その平和な日常は壊された。
巨人が壁を破壊し、侵入してきたのだ。
人類を守ってきた壁が…壊された。
街のみんなは我先にと逃げ惑い、中には自らの子供を置いて逃げる親もいた。
私は両親と兄と共に、必死に逃げていた。
それでも、巨人は私達人間を嘲笑うかのように、いとも簡単に、追いついてきた。
両親は、私と兄を逃がすために、自ら巨人の前に立ちはだかった。
兄は、私を生かすために、巨人の生贄となった。
私だけが、家族の血だまりの中、巨人に囲まれていた。
どうして、私だけが生き残っているのか。
どうして、家族が殺されたのか。
わからない。だけど、1つはっきりしているのは…
こいつらが…巨人が…全てをめちゃくちゃにしたということ。
それを理解した時にはもう、私の身体は巨人の手の中にあった。
あぁ、死ぬんだと、悟った。
(お母さん…お父さん…お兄ちゃん…守ってくれたのに…ごめんね…)
心の中でそう謝り、目を閉じる。
ーーー死を、覚悟したーーー