第2章 2咲目,入団
なんなんだ、あいつは。
俺は廊下を早歩きしながらイリアのことを思い出していた。
塞いだ口を離してやった時の、あの顔。
少し涙目で、上目遣いで…誘うような、あの顔が頭から離れねぇ。
昨日の寝顔だってそうだ、鮮明に思い出せる。
…最近あいつの…イリアのことばかり考えている。
何故だ…あいつの兄との約束があるからか…?
違う…それだけじゃねぇ…もっと別の理由がある気がしてならねぇ。
いつもより険しい顔をして歩いている俺の耳に突然能天気な声が響く。
この能天気な声は一人しか知らない。ハンジだ。
「あっれ〜リヴァイ!なんでそっちから来たの?そっちはお客用の部屋でしょ?」
「あ?なんだっていいだろうが」
「あ〜もしかして、イリアのところに行ってたの?」
こいつ…なんでわかりやがった。
「あの子が来てから1日たりとも会いに行かなかったことないし、もしかして、リヴァイの彼女だったりするの!?」
彼女?馬鹿馬鹿しい。
そう心の中で毒づいてみるも、違和感がないことに気づく。
あぁ、なるほど。この感情はそういうことなのかもしれない。
黙った俺を見たハンジはニヤついていた。
「なんだその顔は気持ちわりぃ」
「いやぁ〜否定しないってことはそういうことなのかなぁ〜って」
「違う。今はな」
「今は?今はってどゆこと!?」
この変人の目が輝きを増した。
めんどくさくなる前にズラかるのが一番だ。
俺はこの変人を無視して自分の部屋へ向かった。
後ろからどういうことー!?と叫び声に近いものが聞こえた気がしたが、絶対にあれは空耳だ。
まぁ、ハンジのおかげでこの感情がなんなのかわかったからよしとしよう。
なんにせよ今日はあいつの入団テストだ。
合格しなかったら…罰を与えるとするか。