第2章 2咲目,入団
しばらくしてようやく落ち着いてきた私は、まだリヴァイさんの腕の中にいた。リヴァイさんは泣いている間ずっと撫でてくれていた。どのくらいそうしていただろう。きっと彼の腕は痺れてしまっているだろう。申し訳ない気持ちが湧いてくるが、私はその温もりから離れたくなくて、未だにすがりついている。
「…落ち着いたか」
「はい…ごめんなさい…服、濡らしてしまって…」
「別に…前にハンジに号泣されて鼻水つけられたときよりマシだ」
「ふ…あははっ、ハンジさんらしいですね」
思わず私は笑ってしまった。ハンジさんに失礼かもしれないけど、心から笑うことで、あの惨状を乗り越えられるような気がした。
私が笑うと、リヴァイさんの雰囲気はまた優しくなった気がした。
「…やっと笑ったか」
「え…?」
「お前はそうやって笑ってろ。お前のその顔を守るために、お前の家族は身を呈したんだろ」
「あ…」
そうだ。私は生きなければ。こうして、心から笑うことが、彼らへの恩返しなのだ。
「はい!リヴァイさん、ありがとうございます。思えば私は貴方に救われっぱなしですね…」
「…ふん…あいつとの約束だからな…」
リヴァイさんの呟きが聞こえなくて、私は首を傾げた。
「どうしました?リヴァイさん」
「いや、なんでもない。そろそろ部屋に…」
リヴァイさんの言わんとすることがわかって私は言葉を遮るように彼の服の裾をつまんだ。
「?…おい、どうした」
「…あ、の…とても、申し訳ないんですが…」
「?」
「…リヴァイさんが、よければ…もう少しだけ…一緒に…いてくれませんか…?」
断られることを覚悟で俯きながら彼の返事を待つ。頭の上から盛大なため息が聞こえてきた。
やはり迷惑だったのだろうか…。
そんなことを考えているうちに答えが返ってきた。
「…明日の試験に影響が出ても知らんぞ」
そう言って再び私を抱きしめた。温かい。一緒にいてくれるだけで良かったのに、抱きしめてくれるなんて。
「…リヴァイさん…あったかいですね…」
「…お前が冷たいだけだ」
とても素っ気ないが、その言葉に棘はない。まるで彼の言葉は、滅多に食べられない甘い甘いお菓子のようだった。
先程まで泣きじゃくっていた私は温かい体温に包まれ、次第に深い眠りへと落ちていった。