第2章 “エース”を連れ戻せ
そう告げると、影山さんは足早に皆の下へと駆けて行った。しばらく呆然と皆の後姿を見詰めていたが、バスの機械的なアナウンスの声に意識を戻され、急いでバスへと走る。
整理券を受け取り、空いている車内へと乗り込む。シートへ腰を降ろすと、発車致しますという声が掛かる。夜道を走るバスに揺られながら窓の外の風景に視線を注ぐ。ふっと脳裏を皆の姿が過ぎる。
みんなといると、不思議と陽だまりにいるかの様な温かさと安心感を感じて、ずっとそこ居たいと思ってしまう。とても優しくて良い人達だ。でも、
────────カサッ
手元から紙の擦れる音がした。視線を落とすと、カレーまんの包みがあった。その包み紙は、彼───影山さんの姿を思い出させた。いつも不機嫌そうで冷たい雰囲気を纏っているけど、不器用なだけで、本当はくすぐったいくらい優しい人。
『明日、絶対来いよな』
私はカレーまんの包みを折り畳み、祈るかの様に胸元で包みを握り締める。自然と頬が綻ぶ。再び窓の外に視線を流すと、届く筈もない返事を呟く。
「また、明日」