第2章 “エース”を連れ戻せ
「まあ、何はともあれ!瀬戸のおかげだよな!ね!旭さん!」
西谷先輩はバシバシと東峰先輩の背中をリズム良く叩く。東峰先輩は痛みに顔を歪めながらも返事を返す。
「西谷痛い痛い!うん。瀬戸ちゃんのおかげだよ。ホントにありがとうな」
「いえ、初対面なのに突然失礼な事ばかり言ってしまって・・・」
「良いんだよ瀬戸っ!ヒゲチョコにはガツンと言ってやれば良いんだよ!」
「ヒゲチョコ言うな!!」
主将がぽんと私の頭に手を乗せる。それだけで僅かに頬が熱を帯びる。主将の体温がくすぐったい。今が暗い時間帯だった事に感謝する。
不意に主将の手が離れる。それと同時に緊張が離れ、息を吐きながら顔を上げると、煌々と明かりの灯る看板の下がった建物が見えてきた。すると、主将とスガ先輩は私達のより数歩先へと進む。くるりと顔をこちらへ向けると、二人はニカッと白い歯を見せて笑顔を浮かべる。
「「肉まん、奢ってやるよ!!」」