第2章 “エース”を連れ戻せ
* * *
着替えを終え、更衣室を出て階段を駆け下り、校門へと向かう。辺りはすっかり闇に包まれ、周囲の景色は曖昧に映る。携帯を取り出し、時間を確認する。バスまで割と余裕あるな。ゆっくり歩くのも良いなーなど考えていると、不意に呼び掛ける声が耳を打つ。
「おーい!瀬戸―!早く来いよー!!」
声のした方向へ視線を向けると、校門には部のみんなが勢揃いしており、田中先輩と西谷先輩、そして日向が驚く程元気一杯にブンブンと手を振ったり飛んだりしている。
一体どこにそんな元気が。
というか、何で私を呼んでいるんだろうか。忘れ物でもしたのか等考えながら、小走りで校門へと近付く。
「皆さん、どうしたんですか?」
「みんなで一緒に帰ろうと思ってよ!」
「え?一緒に?」
「何だよ~!嫌なのか瀬戸?!あ!分かった!影山いるからだな!!」
「そうか日向、お前余程背が縮みたいのか」
「な、何する気だ影山…!」
影山さんの手に拳が出来てる。脳天だ。脳天から圧力掛ける気だ。
「ち、違うよ日向。何で私まで誘ってくれてるんだろうって思って…」
「そんなの決まってるだろ!お前にお礼したいし、お前も仲間だ!」
「そうだ。瀬戸のおかげで旭が帰って来た。みんな感謝してるんだ」
皆口々に私への感謝を口にする。しかし、そこまで言って貰うのが申し訳無い程、私は大したことをしてない。
「え、いや、私そんな、」
「影山に聞いたぞ!!お前がたくさん頑張ってくれたんだろ!」
「え、影山さんがッ?」
日向の言葉に思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。すると間髪入れず影山さんの手が飛んでくる。
「日向ボゲェッ!!」
「ほびゃあっ!!」
日向の頭がスパンと清々しい音を立てる。ごめん日向。
影山さんの頬をほんのり赤くなっていて、何だかこっちも照れてしまう。
「な!一緒に帰ろうぜ!それにこんな暗いのに一人で帰んのは危ないぜ!」
田中先輩の一言に思わず唸ってしまう。確かにこの暗い中を一人で帰るのは不安がある。それに、
「じゃあ、お言葉に甘えて」
─────みんなと一緒に帰るの、楽しそうだ。