第2章 “エース”を連れ戻せ
「え、な、なななな、お前らッ!!何でッ!!!」
東峰先輩も困惑しながらバッと振り返った。
「旭ーお前にしてはよく言ったなー!」
「大地さりげなく酷いな!!」
東峰先輩が主将の言葉に悲痛な声を上げる。そしてそれと同時に体育館倉庫の扉は完全に開け放たれ、バレー部の皆さん全員が姿を見せ始める。
「いやー旭が戻ってきてくれてホント良かったなー!」
「旭さん俺信じてましたッス!!」
「調子良いぞ龍!!」
西谷先輩がスパーンと良い音を立てて田中先輩の頭をはたく。その音が、これが幻覚ではない事を決定付ける要因となってしまった。
「え、え、な!皆さん、いいいいい、いつからこ、こ、ここに……!」
私の問にスガ先輩が「ん~…」と可愛らしく小首を傾げて考え始めるが、今私の心中はキュンともスンとも言わない。
今は羞恥心がパーリー状態だ。スガ先輩は答えがハッキリしたのか人差し指を立て、完璧な笑顔で答えを出す。
「瀬戸の『最低な事、って…』の辺りからかな!」
だいぶ最初じゃねぇかよ最悪だよもう。
「瀬戸カッコ良かったぞ!!最後の『私達仲間を、頼ってくださいよ!』がおれ好きだ!!」
「いやー俺は『自分を責めるのも、自分で自分を守るのもやめてください!』かなー!」
「あ、それ俺も好きだ!」
「やっぱスガさんもですか!かっけースよね!!」
「影山は?!影山はどこが好きだ?!」
「俺は、『待ってるみんなの気持ちを踏み躙る気ですか』…だな」
「おっ、良いとこ目付けてるな!俺もそこだな!!」
「大地さん好きそうな感じッスね!!」
え、何これ拷問???
「でもやっぱりあれが一番だなー!!」
「だなー!!」
田中先輩と西谷先輩が、マックも裸足で逃げ出すとびきりスマイルで口を開く。
「「『私達仲間を、頼ってくださいよッッ!!!』」」
先生ー、先輩方が最後の最後で心を徹底的に粉々にしてきましたー。