第2章 “エース”を連れ戻せ
「えっ……?」
東峰先輩は呆然とした表情を浮かべていて、私の言葉を上手く呑み込めていないようだ。しかし、私は言葉を止めるつもりはない。
「東峰先輩がしばらく休んでいたというのは、他の先輩方から聞いていました。確かに、先輩がした事は良い事ではありません。でも、東峰先輩の気持ちを、みんな考えている筈です!
だから、先輩がここに来た時受け入れていたんじゃないですかッ!もし、みんながあなたを裏切り者だと思っていたなら、冷たい目を向けていた筈です。でも実際はどうでしたか?」
東峰先輩は驚いた様に目を見開いていた。心臓がバクンと煩く脈打つ。これがどんな感情を孕んでいるかも分からないが、言葉は次々と滑り落ちて来る。
「みんな、東峰先輩の事を待っているのに、どうしてそんな風に考えてしまうんですか?待ってるみんなの気持ちを踏み躙る気ですか?あなたはこの部に欠かせない人なんです!」
東峰先輩の瞳がゆらりと揺らぐ。うるうると潤んだ瞳を強く見詰め返す。
「自分じゃ足を引っ張ってしまうって、ここに来なくなったのは、ホントは止められてしまうのが恐かったからですよね?!でも今はあなたを支えてくれる人がいるじゃないですか!いつまで自分を責め続けるんですかッ?!もう苦しまなくて良いんですッ!」
東峰先輩の顔が泣き出しそうに歪む。それに釣られ、私も思わず泣き出しそうになる。だが、奥歯を噛み締めて強く堪える。
「自分を責めるのも、自分で自分を守るのも、もうやめてくださいッ!!
私達仲間を、頼ってくださいよッッ!!!」