第2章 “エース”を連れ戻せ
* * *
町内会チームの皆さんも帰り、みんなで片付けを始める。私は落ちていたボールをカゴへ押し込むと、体育館倉庫へと運び始める。
ボールカゴを押すと、軋んだ音を立てて動き始める。僅かに開かれた体育館倉庫の扉に手を掛け、さらに大きく開け放つ。うお暗い。あまりの暗さに一瞬ビビるが、落ち着いて片手でゴソゴソと電気のスイッチを探して点灯する。ボールカゴを所定の位置に戻すと、ふうと大きく息を吐く。後は何か運ばないといけないのあったっけーと逡巡していると、
ポンッ
「ッッ???!!!!!」
ガンッ!!!
「~~~~~~~~~ッ!!!」
誰かの手が肩に乗り、それに驚き、反射的に振り向こうとする。しかし、何かを踏んでしまい体制を崩すと、思い切り用具に頭を打ち付けてしまった。凄い痛くてどうしたら良いか分からん。ていうか誰だ手ぇ乗せてきた人明日まで慰謝料を包んで私に提出しなさい。
「大丈夫瀬戸ちゃん!?」
「あ、東峰先輩…?どうしてここに…」
手の主は東峰先輩だった。優しげな瞳が頭上で瞬く。いつも大きい先輩だが、今は普段より一段と大きく見える。まあ、尻もちついてるからそりゃそうだわな。
「瀬戸ちゃんに話があって来たんだけど、ごめんね驚かせるつもりなかったんだ」
「い、いえ!どうか気にしないでください、大した事じゃないので」
「でも凄い音したよ!ちょっと見せて!」
「へ、へっ?ちょ、」
グイと手を引かれる。脚がスッと動き、重力を感じずに立ち上がれた。う、うわ…何かキュンとした自分がいる。てか誰でもキュンとするってこれ。
「血とかは出てないみたいだけど……ちょっと触らせて」
「へ…?あ、は、はい…」