第2章 “エース”を連れ戻せ
* * *
「スガァ─────────ッッ!!!」
東峰先輩が、スガ先輩を呼ぶ。
「もう一本ッ!!!」
嗚呼、東峰先輩、トスを──────
スガ先輩がトスを上げる。ゆっくり、丁寧に、東峰先輩に向かって。西谷先輩は静かに東峰先輩を見詰める。その表情はどこか嬉しそうに映った。
─────────キュッ
東峰先輩は大きく跳躍する。ネットの向こう側では三人のブロックが控えている。
東峰先輩は鋭い瞳で宙を舞うボールを捉えたまま、右腕を機敏に振り被る。ブロックが地を蹴り、大きく手を突き出す。それと同時に、東峰先輩の手がボールに触れる。
大丈夫、東峰先輩。あなたはもう知っている。
一人なんかじゃないということ。それを知っていれば、あなたは何度でも─────飛べる。
───────ドゴゴンッ!!!
エースが、スパイクを決めた。
「ナイストス・・・スガ。西谷も、ナイスレシーブ・・・」
二人は眩しくて、思わず目を細めてしまうくらいに、笑った。