• テキストサイズ

【ハイキュー!!】行け!烏野高校排球部

第2章 “エース”を連れ戻せ


「1年の男子二人が、さっき東峰先輩に会いに来ましたよね。その二人はきっと、エースに会いたい、一緒に戦いたいと思ったからここまで来たんだと思います…私の憶測でしかないですけど」

「……」


東峰先輩は戸惑った様に口を開閉させるが、言葉を失ったのか唇を閉じた。私は両手の汗ばんだ手を強く握り締める。何か言わなければと口を開いた。その時、







「どうして俺なんかがいるんだ…」






ポツリと東峰先輩の口から卑屈な言葉が滑り落ちた。隣に立つスガ先輩も、旭…と泣き出しそうな程悲哀を含んだ呟きを零す。二人の思いを痛い程感じてしまい、胸が締め付けられる。だが、そんな風に自分を責める事なんて必要無いって、私が二人に何としてでも証明してみせる。


「それは、東峰先輩がこの部の柱だからです」

「え…?」


「スガ先輩からお聞きしました。パワーがあり、苦しい場面も、難しい場面でも決めてくれたと…。それは誰でも出来る事なんかじゃありません。たくさんの経験と強い気持ちがなくちゃ、出来ないです」

「そんなの…俺なんか当てはまんないよ。もう俺、高いブロックを前にして、それを打ち抜くイメージが見えなくなった。必ずシャットアウトされるか、それにビビって自滅する自分が過ぎる…」




その感覚を、私はよく知っている。一度負った恐怖は容易に払拭など出来ない。その恐怖を身体が覚えてしまい、足や手が思うように動かない。 ​─────分かっているから、助けたい。




「分かります…。簡単に分かるなんて言っちゃいけないですけど、でも少しだけでも分かります。先輩は一人じゃないです。先輩の周りには支えてくれる人がいるじゃないですか。一人で抱え込む必要なんて無いんです。お願いです、戻って来てくださいっ」

「瀬戸…」


スガ先輩が呟いた。スガ先輩を見るとやはり瞳が潤んでいた。私にはこんな事しか出来ないから。全力でやらせてもらってるだけなのに。でも全て私の本心だ。一人じゃない、それを知るだけで本当に、救われた気持ちになれる筈だから。



だから、​──────帰って来て。










「どうか、お願いしますッ!」










私は勢い良く腰を折り、頭を下げた。


/ 440ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp