第2章 “エース”を連れ戻せ
「あ、そうだ!実はな、旭、今進路指導受けてて居ないんだよ」
「えっ!?そ、そうなんですか?!」
「うん。何か、ごめんなー。折角来てくれたのに」
「いえ、私が勝手に来ただけですし…」
やっぱり『突撃エースの東峰先輩!』大作戦は無理があったか。
事前に話がしたいと伝える術も無く、何より先に伝えてしまうと逃げられてしまうかもしれないと思い先述した作戦を決行したが、こういう情けない事態になってしまった。ふがいない。
「あのさ良かったら、俺と一緒に旭待たない?」
「えっ?」
スガ先輩の提案に、思わず目を瞬かせた。スガ先輩は柔和な笑顔を湛えたまま先を続ける。
「俺も、旭に帰ってきてほしいからさ。瀬戸にばっかり頑張らせるわけにいかないじゃん!」
スガ先輩の言葉に、温かいものがじんわりと染み込む。やっぱりスガ先輩優しい。
「あ、ありがとうございます!」
「良いって良いって」
スガ先輩はにししと照れ臭そうに笑い、頬を掻く。と、不意にスガ先輩がワントーン声を低くし、こそっと私に呟いた。
「それに、俺いないと瀬戸ガクブルになると思う」
「マジですか…」
そんなに東峰先輩怖いのかよ。私の膝ボーイが老人性の震えを見せ始めたんですけど。