第2章 “エース”を連れ戻せ
次の日の放課後、私の足は階上へと進んでいく。
本来ならばもう体育館へと向かっていなければならない。先日は部活動の様子と、清水先輩からマネージャーの仕事内容の指導を受ける事で終了した。
今日から本格的に男子バレー部のマネージャーとして始動するのだが、どうしてもしたい事があり、用事が出来てしまったので少し遅刻するという旨を日向に伝えてあり、武田先生にも伝えてくれるよう頼んである。
最後の段に足をかけると、私の緊張は最高潮に達する。同学年達とは異る大人びた声音達が喧騒を産み出す。私は肩に掛けた鞄の紐を強く握り締める。
やっぱり3年生って大人びてますわー。
私達と2歳離れてるように見えん。絞りに絞った勇気が早くも消滅しかける。だが、昨日の部活が終わった後の清水先輩との出来事を思い出す。
『あの、清水先輩!』
『? どうしたの伊鶴ちゃん?』
『その、東峰先輩の組を教えて欲しいんです!』
『良いけど、どうしたの?何か用事?』
『私に、出来る事を、したいんです』
『・・・分かった。頑張ってね』
その時、答えにもなっていない私の言葉に、清水先輩が静かに微笑んでくれた。その笑顔が私の背中を優しく押してくれた。やるしかない。私にも出来る事を。
東峰先輩のクラスは3年3組。とりあえず3組の前まで行ってみるか・・・と、教室が立ち並ぶ廊下へと足を進めた瞬間、
「!!??」
ビュンッと目の前を男子生徒二人が走り抜けていった。その拍子に生み出た風に前髪が靡く。
今の、影山さんと日向に見えたんだが。もしかして二人も、東峰先輩に会いに行ったんだろうか。そんな疑問を噛み締めて歩を進める。3組の前に辿り着くと、見覚えのある風貌が瞳を焼く。